……っぽい。
 
のに……。

本当にどうしたんだろう。

私の心を置いてけぼりしたまま始まってしまった行為に、悔しさや悲しさが涙になって込み上げてきてしまって、もうどうしようもない。


「な、んで……こんなに、乱暴に……」


鎖骨の下あたりにチクッとした痛みが走り、思わず顔をしかめてしまいながら、たどたどしく抗議をしてみても、笠松はふっと嘲笑じみた笑いをこぼすだけで結果は変わらない。

笠松は何を考えているの?

なんで今日はこんなに乱暴なの?

私が心配だからという理由以外にも、もしかして出張に行きたくない別の理由もあるの?


私バカだから、全然気づいてあげられなかったし、今も本当の理由は分からないままだ。

でも、言っても分かってもらえないだろうと最初から諦めてしまうくらい頼りないのは分かっているけど、言ってくれないと分からない。

こんなになるまで追いつめられる前に言ってほしかった、そういう細かい変化や心の揺れにちゃんと気づいてあげたかった……。


「出張、行ってほしいんでしょ? だったら、今日だけ……今だけでいいから、俺のワガママ受け入れてよ。お願いだから。頼むから」
 
< 285 / 349 >

この作品をシェア

pagetop