……っぽい。
時刻はすでに深夜1時を回っていて、個室だがあまり大きな声で会話はできない。
ひそひそ話のように声のトーンを落としてする会話は、内容こそナマケラゲが主体だが、なんだか胸の奥がこそばゆい感じがする。
すると、ふいに椅子から立ち上がった先輩は一歩こちらへ近づくと、すとんとベッドサイドに腰かけ、俺の顔をまじまじと見つめてきた。
「笠松がまだ眠ってたとき、昆野さんから話を聞いたの。今回のキャンペーンでは特に否定的な意見を気にしていたようだ、ナマケラゲを通して私を否定されることが怯えるほどに怖かったと思えてならない、って」
「あのハゲ河童……」
額を押さえてがっくりとうなだれる。
昆野さんは仙台キャンペーンの責任者で、なぜか初対面のときから俺のことを根掘り葉掘り聞いてくる、とにかく変な人だった。
自分ではいつも通りに仕事をしているつもりだったが、色々な疲れが顔に出ていたのか、それとも他地区の社員や常に一緒に行動を共にしている本社のオジサマ方から何か聞いたのか、何かと世間話を持ち掛けられては言葉巧みに先輩のことまでうっかり喋らされ、正直ウンザリ。
世間話好きのハゲ河童と密かにひどいあだ名をつけていたくらい、俺の中では掴み所のない要注意人物としてマークされていた。