私が恋を知った人
第一章 言葉に出せない痛み
すっかり冷めきった冷凍食品をフォークで弄ぶ。一人だけの部屋は妙に静かで、フォークと皿の擦れ合うカチャカチャという音だけが鳴り響いていた。
本当はこんな粗末なものなんて夕食として食べたく無いけれど、仕方が無い。あんな母親が用意できるものはこれしかないから。
もうお気づきだろうが、これは私の夕食の光景だ。皿に並ぶ冷凍食品を、私は毎日一人で食べている。いや、食べているというよりは処理しているという表現の方がいいかもしれない。
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