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「では貫七よ。今後は身を慎めよ。おりんとせいぜい励んで、子でも生したら伏見に来るがいい。徳を授けてしんぜよう」

「んなっ!」

 真っ赤になった貫七に、ちちちち、と指を振る。

「言うたじゃろ。それは恋心というものよ。良かったではないか。おりんが男であったなら、お主、衆道に走らねばならなかったぞ?」

「そうよ。それこそあの手代と同じだよ?」

 そういえば、あの店の行く末も面白そうだ、と木の葉もくすくす笑う。

「おりんちゃん。貫七に愛想尽かしたら、いつでも伏見においで」

 撫で撫でとおりんの頭を撫で、木の葉は重箱を包んでいた風呂敷を持った。
 すっかり中身の少なくなった重箱は、置いて帰るつもりなのか。

「これ、結構な値打ちものなのね。折角太郎坊様に目通りするんだから、それなりの物を持ってくるのが礼儀だしね~。ま、太郎坊様がお山に引っ込むんだったら、貫七たちが使いなよ。米粒入れておくとね、次の日には飯がいっぱいになってるのよ」

「ま、伏見に来た時には、おかきでも持ってくることじゃな」

「たまに油揚げに戻るから、油揚げもよろしく」

 出来れば美味しく炊いた奴ね、と注文をつけ、お狐様二匹は腰を上げた。
 来た時同様、小薄が呼んだ雲に乗って帰っていく。
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