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 十年間放浪してきた貫七には、脛に傷持つ者を見破る目も備わっている。
 嘘をつけば、このわかりやすい男のこと、たちまちぼろを出すに決まっている。

「ふぅん? 旦那に頼まれたってことか? だったら術者の目星ぐらい、ついてから言いやがれってんだ」

 ふん、と鼻息荒く言う貫七に、政吉は相変わらず視線を彷徨わせたまま、頭を掻いた。

「い、いえ、あの……。一応旦那様も、囲い者から情報を引き出そうとは、してくださいましたよ。ただ女のほうも、下手に教えて女将さんのほうから攻撃されるのを恐れたようで。口を割らなかったようです」

「攻撃?」

「先に術者に会って、もう一度腹の子を変えて貰うとか。それよりもっと簡単に、女そのものを消して貰うとか」

 うげ、と貫七の顔がしかめられる。

「そんなに店を乗っ取られるのは嫌なもんかい」

「そりゃあ……。まぁ妾の人柄によるところが大きいんでしょうな。大人しい人なら、男が生まれりゃその子だけを取り上げればいい話ですから。今の女は、しゃしゃり出過ぎなんですよ」

「なるほどな。正妻を押しのけて、自分がその座につこうって肚か」

 だったら確かに、腹の子をまた変えるなどというまどろっこしい方法ではなく、女そのものを消したほうが、気分的にもすっきりするだろう。
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