Switch
第十一章
 そんなこんなで、瞬く間に十日が過ぎた。
 いい加減、廻るところもなくなってくる。

「ああくそ。十年かかっても見つからなかったと思えば、まだまだ短ぇが、こうも見つからねぇもんかよ」

 部屋でがしがしと頭を掻き毟りながら、貫七がぼやく。
 横で政吉が、首を傾げた。

「十年?」

「いや、何でもねぇ」

 適当に誤魔化し、貫七は膝の上のおりんを撫でた。

「しかし、覚悟していたとはいえ、こうも見つからないものですかねぇ。遠く離れたところにまで、噂が広まるぐらいの術者なのに」

 政吉も、ため息交じりに言う。
 貫七は顎を撫でた。
 ここに来るまでも道々聞いてみたが、そういえば噂になっている、というほど知っている人はいなかった。

「そうか」

 ぽん、と貫七が膝を打った。

「俺たちが話を聞いてきたのぁ、庶民じゃねぇか。考えてみりゃ、その辺の奴らなんて、跡取りとか関係ねぇ。そんな御大層な家柄じゃねぇしな。そんな奴らは腹の赤子がどっちだろうと、構いやしねぇだろうよ」
< 91 / 252 >

この作品をシェア

pagetop