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 跡取り息子が必要な家というのは、相当良い家柄だ。
 単なる町人であっても、大店である。
 現に政吉の店も、地元じゃ結構な大店らしい。

「そんな奴らに聞いたところで、知るわけねぇわな。……けど……それこそそんな良い家柄のお人になんざ、そうそう近づけねぇし」

 見つからない理由がわかった途端、手段が絶たれた感じだ。
 貫七は唸って、頭を抱えた。

 きっかけさえあれば、口を利く機会は得られよう。
 何かの弾みで近づくことさえ出来れば、例えお姫様だろうと落とす自信はある。

 だが近づく機会自体が、そうそうないのだ。
 出会うことさえ難しい。

「何とか、術者自体を見つけられねぇもんか……」

 唸っていると、は、と政吉が顔を上げた。

「そうだ! いいことがあります!」

 ずい、と膝を進める。

「確か稲荷山の新池は、人探しの池だったはず。あそこで柏手を打つと、木霊が返って来た方向に、行方不明の者がいるっていう言い伝えがあるそうですよ」

 意気込んで言う政吉を、貫七は黙って見た。
 そして、眉間に皺を刻んで首を振る。

「行方不明じゃねぇよ。単なる人探しだ。相手と会ったこともねぇんだぜ?」

 そもそも木霊が返って来た方向とは、またざっくりした括りだ。
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