私の居場所
「会社の人を迎えに行かなきゃならなくなったの。」

「そう。気を付けていってらっしゃい。」

そう言ってお母さんは気持ちよく家を送り出してくれる。

心配をかけてばかりのお母さん。

感謝してるからね。

口には出して言えないけれど、そんな事をいつも思いながら、出勤していく。

「え~と、確かこの辺…。」

福山さんの家に来るのは初めて。

「あっ、この自転車は福山さんのだ。」

あるアパートの前に置かれている見慣れた自転車。

そこで電話をしてみる。

「園、着いたか。」

待ってましたとばかりにスマホに出たような雰囲気の福山さん。

さっきと違い、いつもと変わらない声。

もうすっかり目が覚めたんだろう。

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