オトナの恋を教えてください
「すいませーん、ホッピーのナカくださーい。あと、イカ一夜干しと、長ナスの漬物もー」


気を利かせて注文してやる俺。
いや、俺が腹減ったんですけどね。

注文を終えてから、余裕の笑顔を柘植に見せる。


「柘植ー、その気持ちをはっきりと斉田さんに言えばいいじゃん」


「事はそんなに簡単じゃねーだろーが。うまくいく公算がなかったら、はっきりなんか言えるか。百戦錬磨の柏木と一緒にするな」


俺だっておまえと一緒だよ。

そう言おうと思ってやめた。

そこから先は言える事情じゃないから。


「でも、柘植が素直に気持ちを伝えて、心打たれない女なら、そこまでだと思う。おまえとは合わないよ。告白がいい判断基準になると思うけど」


「うー、斉田さんと俺が合う合わないの前に、こっちが惚れちゃってるんだよ。失敗したくない。彼女の笑顔が見られなくなるなら、このまま曖昧な関係のままでもいい」


わかるよ、その気持ち。

俺は言えない言葉を再び飲み込む。
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