オトナの恋を教えてください
「ああ、そうみたい。まずいことに」


「はい、困りました。私たち、こんなことになる予定じゃなかったのに」


「ホントだよな」


俺たちは顔を見合わせ、あらためて笑った。
お互いの顔は苦笑半分、哀切半分の寂しい笑顔だった。


「気付いたら、好きになってました」


「うん、俺も。最初はあり得ないって思ってたけどな」


「私たち、まずいですね」


「ああ、マズイ」


いろはは母親を裏切るつもりはない。

俺だってわかる。
いろはにとっては母親の言う通り、見合いの官僚と結婚するのが一番だ。

俺たちの抱える気持ちは『まずい』のだ。


「柏木さん、少し待ってもらえませんか?」


急にいろはがベッドの上で居住まいを正し、正座になった。
大事なことを言おうとしているようで、睫の濡れた双眸が俺をじいっと見つめている。
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