オトナの恋を教えてください
帰宅した後、事情を説明しようとする私を、母は氷のような無表情で見つめた。


『男性との交際は禁止したはずです』


『お母さん、大事な話があるの』


食い下がる私を母はぎろりと一瞥した。
そのひと睨みは私を威圧し、戦意を削ぐには充分な威力を誇る。

母が無表情だと思ったのは間違いだった。その瞳には怒りが燃え盛っていたからだ。

いっそ、憎悪すら感じるのは気のせいではないだろう。

母を裏切ったのは私。
大罪だ。
こんな瞳を向けられても文句は言えない。

おののき、言葉を失った私に、母は丁寧な口調で告げた。


『携帯を渡しなさい。外部との連絡はとらなくていいわ。会社にはお休みする旨を私が連絡しておきます。あなたは今週末のお見合いまで、家で頭を冷やしておきなさい』
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