オトナの恋を教えてください
柏木さんが自分のいる階段手すりを指す。
私はぶんぶん首を振った。


「無理です!母が私のことを見張る家政婦さんを頼んでしまいましたし、今はまだ母も出勤前で家にいます。出られません」


「そうじゃなくてさ、俺が手ェ伸ばすから、そこのひさしに足乗っけて飛び移れるかって聞いてる」


「ええっ!?」


私は思わず大声を出し、慌てて口を塞いだ。
母たちにバレるわけにはいかない。


「大丈夫、ここは10階だけど、ほらその窓の下なら8階のベランダが近い。最悪、落ちても死なない。少し頑張れば、いろはは軽いから俺が受け止められる」


「そんな無茶な……」


「無茶を承知で言ってる。俺はおまえをさらいに来たから」


どくんと胸が鳴った。
柏木さんは、3日音信がない私に会いにきてくれた。
この時間なら、きっと有休を使ったんだろう。
美野里に住所や会えそうな方法を聞いて、柘植さんに使えそうなアイテムを借りて。
私を救い出しに来てくれたんだ。

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