オトナの恋を教えてください
「いろははお母さんを理由にして、自分で歩くのをやめているだけだ。お母さんの歪んだ干渉を受け入れることで心を満たしているんだ。そんなの愛情じゃない。思いやりじゃない。
……もう気付いてるんだろ?自分とお母さんの関係の歪みに。だから、おまえは悩んだんだ。仕事のことも、俺とのことも」


「歪み……私は……」


「三条いろは!おまえは三条姫子じゃない!ひとりの人間だ。俺が好きになったひとりの女だ!」



胸の中にあった鏡が割れた。

その鏡は23年間、母を映し続けてきたものだ。


『鏡よ、鏡』

母は私にいつも聞いた。

『私の言うことが聞ける?』


私は鏡だから、母の思うままの姿を映した。

それが自分だと思ってきた。


違う。
そんなのは違う。

私は、三条いろはだ。
三条姫子じゃない。

母の思うとおりに生きるなら、私が私として産まれてきた意味がない。


わかっていたのに。
私は母を喜ばせたいばっかりに、自分を偽り続けてきた。


音をたてて、私を作り上げていた鏡が割れた。

がらんどうの心……そこには、何者でもないただの私が座りこんでいた。

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