オトナの恋を教えてください
その時、私の視界にある人物が映った。

新宿駅から階段を登って出てくる人は、間違いなく柏木さんだ。

どこぞで打ち合わせでもした帰りだろうか。
なんという偶然か、柏木さんも人混みの中、私を見つけた。
茶髪の若いメンズと手をつなぐ私を。

私は藁にもすがる想いで彼を見つめた。

自分で段取りしておいてバカ極まりないけれど、全身全霊で『助けて!』と言っていた気がする。


「さ、いろはさん、いこ」


レオくんが手を引っ張る。私は引き摺られるように歩き出す。

柏木さんの姿は雑踏の向こう、もう見えない。


ああ、バカだ、私。
なに、助けを求めてるのよ。
柏木さんにはもう関係ない。

柏木さんはきっと思ったに違いない。
あの女、社外で男捕まえたじゃん。やっぱ、関わらなくてよかった~って。

とにかく、目先のことを考えなくちゃ。

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