まだ、心の準備できてません!
「でも自転車はどうしたんだ?」


──ギクリ。キッチンに向かっていた足を止める。

そうだった、自転車は気付かれるよね……。ここは当たり障りない感じで返しておこう。


「マシロに置いてきた。ちょっと屋台ぶらぶらして、そのまま歩いて帰ってきたから」

「なんだ、それならオレ達のところにも来ればよかったのに。可愛い美少女戦体のお面とか売ってたんだぞー」

「絶っ対いらないから」


私を何歳だと思ってんのよ、と心の中でツッコミながら食い気味に返した。


ひとまず話は逸れて、それ以上昨日のことは話さなかった。

お父さんが出ていくと朝食の後片付けをして、スウェット姿のままぼんやり考える。


そういえば、昨日夏輝さんは『自転車があるからもしかしたら戻ってくるかもと思って』と言っていたよね。

あの人、私が自転車で通勤しているってことも知っていたんだ……。

でも、さすがにこの家の場所まで知っていたとは考えにくい。

じゃあ、どうしてわかったんだろう。酔っ払いながらも私が言ったのかな?


……そういうことにしておきたい。じゃないと、なんだか夏輝さんがストーカーみたいになっちゃうし。

< 73 / 325 >

この作品をシェア

pagetop