今から、絶対にバレない嘘をつきます
三ヵ月前ー…
あれはまだ35℃をゆうに超える、真夏の出来事。
『…俺と付き合ってほしいんだけど』
放課後、冬香が委員会で一人で帰ることになってしまった日、あの日に突然、彼は現れて、そう言ってきたんだ。
同じ学年の、隣のクラスの、サッカー部のイケメン、そして冬香が想いを寄せている人、だった。
突然の出来事に驚いた、それも確かにあった。
でも、冬香に付き添って、いつも彼がいるサッカー部の応援に行っていたから。
そこで冬香から彼のことを色々と教えてもらって、そして冬香に彼が好きなんだと告げられた。
そんな冬香の想い人から、突然の告白。
彼はすごくイケメンで、サッカーも上手で、彼の周りにはたくさんの人が集まる、そんな人から告白を受けるなんてこと、まず私のこれからの人生にはあり得ないことだろう。
冬香の想い人でなければ、きっと、私は即OKを出していただろう。
でも、冬香の想いを寄せている人だ…。
『………ごめんなさい』
私は聞き取ってもらえるか微妙な程の声で、そう彼に返事を告げる。
『好きな人とか、いんの?』
彼はとても真剣な目で私を捕え、そして問いかけてくる。
『……それは……いないです。
でも、恋愛…には興味がなくて……。
だから、ごめんなさい!』
私は彼に嘘をついて、言葉を言い終わると同時に猛ダッシュした。
彼から逃げた。