課長の独占欲が強すぎです。

 でも、せっかくの歓迎会でガッカリさせるくらいなら無理したほうがマシだったかな。そんな風に俯いて考えていると。

「謝る必要があるか。食べる量なんざ人それぞれだろうが」

 低くて野太い声が私の向かいの席から飛んできた。驚いて顔を上げれば、やっぱり愛想の悪いムッスリした表情の宍尾さんがこちらを一瞬見やってから手元のメニューに視線を落とした。そして目線を伏せたままウエイトレスさんに告げる。

「俺はハンバーグ&ステーキセットとミックスグリルセット、両方ライス大盛りで。それからビーフシチュー単品を」

「っ!?」

 たった今、自分の食べる量を気にするなと言われた私は、それを言った本人の食べる量に瞠目してしまう。だってそれ何人前!? それに気付いた東さんがフォローを入れるように笑い声をあげた。

「あははっ、驚いちゃうよね。宍尾さんいっつも3人前はペロリだから。こんだけでっかい身体保つのも大変だよね。あ、俺は日替わりハンバーグランチ、パンで」

「す、すみません。驚いちゃって……」

 思わず目を剥いてしまった自分を恥じて、おそるおそる謝った。けれど宍尾さんは相変わらずムスッとした表情で窓の外を眺めている。怒らせてしまったのか、それともこれが彼の通常状態なのか分からないけれど、隣の席の東さんが普通にしているので大丈夫なんだろう。

 やがて、たわいもない仕事の話をしてるうちに料理が運ばれてきた。

 
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