課長の独占欲が強すぎです。

 会社から歩いて5分足らずの所にある洋食屋『キッチン・モーリー』は人気店のようで、まだお昼を回って間もないのに店内はすでに多くのお客さんで賑わっていた。

 私たちは6人と大目の人数だったのでそれぞれ3人ずつのテーブルに分かれる。私と同じテーブルに座ったのは東さんと……宍尾課長だ。まあ、そうだよね。課の代表と歓迎される立場の新入りなんだから。

「橘さん、ここはハンバーグがオススメだよ」

 私を気遣ってか色々話しかけてくれる東さんが救世主に見える。この人が場を和ませてくれなければ、私は宍尾さんのオーラに気圧されて一言も喋れなかっただろう。

 勧めてくれたメニューにあれこれ目移りしてるとウエイトレスさんが注文を取りに来て、私は慌てて「ハンバーグを単品で」と頼んだ。それを聞いたウエイトレスさんと東さんがキョトンとした表情を浮かべる。

「単品でいいの? ご飯もパンも付かないよ?」

「すみません。私、体質であまり食べられなくって……残しちゃったらもったいないので、単品でお願いします」

 答えながら気まずさと恥ずかしさで縮こまってしまった。

 せっかくご馳走してくれると言ってるのに気を悪くしちゃったかな。でも、自分でもどうにもならない。生まれつきの体質で私は人一倍小食なのと小柄な身体をちょっと気にしていた。

 少量ずつ分けて時間をかければ食べられない事も無いけど、いっぺんに人並みの量を食せば間違いなくおなかを壊してしまう。

 
< 17 / 263 >

この作品をシェア

pagetop