課長の独占欲が強すぎです。
「有栖川さん……」
再び涙に濡れてしまった彼女に、私はどうしていいか分からず困惑しながら呼び掛ける。
「ごめんなさい。そんな皆さんにに慕われてる宍尾さんを、私の我侭で振り回しちゃダメですよね。でも……あの人に支えて欲しい。私もあの人に大切にされたい。側にいて欲しくてどうしようもないんです」
霧雨のように儚く静かな涙声だったけれど、言葉のひとつひとつが私の胸に深く突き刺さっていった。
「書けなくて苦しいんです……自信が無くて消えてしまいたくなる夜を、宍尾さんに慰めて欲しいと思うのはいけない事ですか」
『そんなこと言わないで下さい』。叫びたい気持ちが喉元まで出掛かったのを私は唇を噛みしめてこらえた。
和泉さんは私のものなのに。そんな子供じみた独占欲が、感じたくない罪悪感で覆われていく。
今にも消えてしまいそうな脆弱な身体に想像も出来ないような重圧を抱え震えてるこの人に、私は恨み言も慰める言葉も掛けられないまま口を噤み続けた。