課長の独占欲が強すぎです。

 私のコンパクトなお弁当箱の何倍あるだろうか。ドン! ドン! ドン! と並べられたでっかい丼がふたつと深皿がひとつ。それらが応接セットのテーブルを半分以上占拠している。

 いつもの事だけどよく食べるなあと感心していると、割り箸を割った宍尾さんが「橘」と呼び掛けてきた。

「海老天をやる。だからお前の玉子焼きをもらうぞ」

「なっ!?」

 唐突な有無を言わさぬおかず交換。宍尾さんはヒョイッと自分の丼から海老天を取るとお弁当箱の蓋に置き、返す刀で玉子焼きを一切れさらって行く。

 わ、私、いいとも何とも言ってないのに……。

 あっけにとられて見ていると、小さな玉子焼きは大きな口にパックリと飲み込まれ、丁寧に租借した後に「美味い」とのお褒めを頂いた。

「ど、どうも」

 褒められた筈なのにどうも府に落ちないと思いつつ、私ももらった海老天を端から齧りながら「美味しいです」と褒め返しておいた。

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