片道切符。


「なんでだよ、最近一人暮らし始めたんだろ?泊めろよ。」

どうしてこの人はそのことを知ってるのか…

俺は佐倉さんに一人暮らし始めた話、全然してないんだけどな。


「嫌ですよ。てかなんで佐倉さんはいつも俺のこと

なんでも俺が話す前に知ってるんですか?」

「なんでいきなり一人暮らし始めようと思ったの?」

…俺の質問はガン無視かよ。

ひとつため息を吐いた俺は、観念したように佐倉さんに打ち明けた。


「別にしようとか考えてたわけじゃなくて、実家追い出されたんですよ」

「追い出された?」

「いや、まあ…結局は自分から言って出たんですけど…

先月の中頃、兄貴が婚約者連れてきたんですよ。」

「へえー。お前、兄ちゃんいたのか。」

「はい。それで将来的に実家に入りたいとかで、

だったら早いうちのほうがいいかと思って、それで衝動的な感じで…」

ちょうどよかったんだ、俺だっていつまでも実家暮らししてるわけにはいかないと思ってたし。


「こう見えて、なんか…安心してるんです」

「なんで?」

「家賃払ったり、飯代だったり、佐倉さんが家族を養うのに比べたら全然ですけど、

それでも、何かのために働いてるって、目標みたいなのが持てたので。」

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