片道切符。


「他人の趣向にどうこう言わねーよ」

「いつも言ってるじゃないですか」

「そうか?」

あははとあからさまな笑い声をあげた佐倉さん。

「で、お前、オンナは?出来たのか?」

「…はあ、ほらまた、どうこう言ってるじゃないですか。」

「別にいいだろーが、このくらい」

「出来てませんよ。」

「あぁん?」

「だから、出来てませんって。」

「はやくオンナ作れよ」

「そりゃ、欲しいですけどね。カノジョ。」

「つくれよ、お前の大切な存在。」

「……はい」


家庭を持つ佐倉さんには、守らなければいけない大切な存在がある。

そのために、日々必死に仕事をして、働いている。

本当は高校卒業後、専門学校に進学する予定だったという話も聞いたことがある。

けれど彼は、新しく生まれくる命のために、職に就くことを決めたそうだ。


それに比べて俺は、守るものなどないし、未だに実家暮らしだし…

だから、考えてしまうことがある。

俺は何のために働いて、生きているのだろうかと。

< 5 / 64 >

この作品をシェア

pagetop