月だけが見ていた

いつからだったろう


主任のキスを、まるで当たり前みたいに受け入れるようになったのは。



太い毛糸でざっくりと編まれたマフラーは

コーヒーと煙草と
主任の匂いがする。



「……」




彼の吐き出す白い息が、ゆったりと空に昇っていくのを見ていたら
何故か、泣き出したいような気持ちになった。
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