月だけが見ていた

「うわ、寒っ…」


ビルの外に一歩出た途端、冷たい風が容赦なく吹き付けた。
主任の隣で、私も思わず身震いする。


「お前、これ巻いとけ。」


主任は自分のマフラーを私の首に巻いてくれた。


「ありがとうございます」

「ん。」


私の首元で、太くて長い指が忙しなく動く。


「よし。行こ」
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