月だけが見ていた
彼の声のトーンが、もうひとつだけ
低く、甘やかなものに変わると



「……はい」

「こっち向けって、」



下り続けるエレベーターの中で
彼は、ゆっくりと私に口づけた。



「……」




この人は、いつも

とても優しいキスをする。
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