華吹雪
昼見世はあまり賑わいがなく、手紙を書いたり、本を読んだり、遊び半分過ごすことがおおいでありんす。

わっちの傍らで、禿はかんざしやら、キセルやら金具などをせっせと磨きんす。

「これも磨いてくれんすか?」

たいこに懐に入れていた懐中時計を手渡すと、興味深そうに懐中時計のゼンマイを見る。

「わぁ、綺麗な時計や」

太夫と金色の懐中時計。
おかしな取り合せやけれど、これがわっちの「印」でありんす。

「姐さん、これ何て読むんや?」

たいこが懐中時計の蓋に刻まれた言葉を指さす。

「虹でありんす」

「外国の言葉か?オイラ見たことない言葉や」

「フランス語でありんすよ」

「フランス語!?さすがオイラん姐さん!」

「わっちの血の言葉でありんす」

「血?」

言葉の意味がわからす、たいこが首をひねる。

わっちの血には、フランスの血が混ざっておりんす。

その名残は翡翠のような色の目。

産まれたばかりで売られたわっちに、お母はどんな気持ちでこれを握らせたんだろう…




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