【好きだから別れて】
毎日毎日毎日。


仕事が終われば真也は家へ迎え来て、会話をしたりドライブをしたり。


休日も外出して、とことん二人で時間を埋め続けた。


夜になれば真也に体を求められ股を開く。


抱きしめられれば抱きしめ返す。


キスしてくれば虚ろな目を閉じ拒まない。


愛とか恋とかそんな甘ったるさなんて必要ない。


落ちるとこまで落ちろ。


クソ女…


あたしは自分に対し絶望しかなくて、そんな自分が憎らしくてわざといたぶっていた。


「お前なんか死ねばいい」と死に損ないの体を真也で汚した。


悠希に助けられた命なのに。


命の有り難みなんてそこに全くなかった。


そして真也と体を重ね続け時はたち。


三ヶ月が過ぎた。


――なんだろう。最近体調すぐれねぇや…


小ぶりな胸に張りがあり、ちょっとふれただけで痛みが伴いあきらかにおかしい。


時々吐き気に似た症状も起き、微熱も続いている。


まさか出来てるなんてドラマ染みた展開なんてありえない。


はず…


十代から今まで中だしされても一度も出来た経験がないんだ。


あたしは不妊で生だろうと出来ないはず…


なはずが生理がきていない。


カレンダーと生理日を照らしあわせるとずれている。


ふてぶてしくあたしの家に出入りするようになっていた真也は、生理の遅れに気付いた日も家に来ていた。


「あのさ。歩、生理こないんだけど…」


「まじで?」


こっちが神妙な顔つきで話したのに真也は驚きもせず無表情だった。


「検査薬しないとわからないから買いに行きたいんだけど…」


「おぉん」


嬉しいとかヤバイとかなんの反応も見せない真也とすぐ妊娠検査薬を買いに行き、帰宅後緊張したままトイレで検査薬を使い一分待った。


一分にも満たない数秒でくっきりと陽性反応を示す検査薬。


箱の裏に記載された簡単な説明書きとしるしを見て、再度検査薬に手を伸ばし握りしめトイレを出た。
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