【好きだから別れて】
その曲は別れた恋人に問いかけるせつない歌詞。


まるであたしと悠希を振りかえっているかのような、懐かしい歌詞だった。


誰かを死にそうなくらい愛し…


あの海に…


好きだからこそ意地悪を言った…


悠希との日々が映し出される異空間で、あたしは眩し過ぎた過去を思い返していた。


そして何度も繰り返す言葉「……さよなら」


サ・ヨ・ナ・ラ…


……………




「歩ぅぅ~うけるな。ははははっ」


「お前ムカつく女!」


「大丈夫だから。俺がいる。もうラクになろうな」


「ゆっくり寝ろよ。疲れただろ」


「別れたくない!」


「歩!愛してる!!」


「俺、お前しか見えないんだ」


「海の青さは空の青さ。空の青さは海の青さ。互いが互いを染めるんだよ…」


もう隣にはいない悠希の姿が思い浮かんで離れない。


あの時の


あの声。


耳元でクスクス笑ってた


あの


柔らかな声。


あなたの声が


聞きたい…


「悠希なんでいないの!なんで!なんで!!助けて…助けてよぉおお…」


声を張り上げハンドルにしがみつき、あたしは再び泣き出した。
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