雨に似ている
店内は理久の最初の怒鳴り声で、生演奏を披露していた音楽科の学生も演奏を止めてしまい、ヒソヒソ話さえも微かにしか聞こえないほど静まりかえっている。

扉のベルの音が、静まりかえった店内に響く。

扉の閉まる反動で薄茶色の髪がフワリと揺れる。

細く華奢な少年がゆっくりと、肩を落とし黙りこんだ3人の席に歩み寄った。


「どうかした? 時化た顔だな」


ーーえっ、周桜くん!?

郁子はハッとし顔をあげ、詩月を見上げた。

「緒方、目が赤いな」

郁子は詩月に言われ、慌てて涙に濡れた頬を拭った。

「詩月! お前、病院抜け出して来たのか」

理久が厳しい顔で訊ねた。
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