雨に似ている
「怒らせるようなことをしたのか?」

理久が目を丸くする。


「緒方の演奏中に倒れたみたいだから」

詩月はポツリ呟く。


「さぁな~。お前の顔を心配そうに覗きこんでたな」

理久は、詩月をマジマジ見つめて笑う。


「泣いてたかもしれない」ポツリ付け加える。


「はあ!? なんで、緒方が泣くんだよ」

理久は小さく口笛を鳴らす。


「緒方には安坂さんがいる」

理久は、呟いた詩月の言葉を笑いながら否定する。


「お前は気を回しすぎ。あいつらは幼なじみだ。それ以上でも、それ以下でもない」


「そうかな~、どう見ても安坂さんが……」


「それだけ、元気なら心配ないな」

理久はフッと微笑み、心電図の画面を一瞥する。


「お前が編入した日。郁子の喜びようは、凄かったんだぜ。あんなにはしゃぐ郁子は初めてみたってくらいな」

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