雨に似ている
娼婦を救いたいと願う、深い慈悲まで伝わってくる。

「愛している。例え規律により貴女を身請けできなくとも。
貧しい修行僧の身では。叶わぬ願いでも。それでも貴女を愛しているから救いたい」

修行僧の強い意志を感じさせる。

美しく澄んだ音色、技術も確かなものだ。


貢が何より感心するのは、音色から修行僧の心が伝わってくることだ。

ヴァイオリンの音色に胸が揺さぶられ、締め付けられるほど切なくなる。

貢はヴァイオリンの音色を追い、屋上まで上り足を止める。

見知った後ろ姿、音色の主に思わず息を飲む。



――周桜詩月!?

貢は言葉を失ったまま、茫然とする。


貢は詩月の母親が、ヴァイイオリン教室をしていることも、詩月自身が副専攻にヴァイオリンをとっていることも承知している。

< 69 / 143 >

この作品をシェア

pagetop