雨に似ている 改訂版
窓枠の空
温度調節の行き届いた暑くもなく寒くもない空間。

「暑さ知らずでいいな」暢気な笑い声に、詩月は苛立つ。

詩月は夏休み早々から、検査入院を強いられている。

晴れた日も曇った日も雨の日も関係なく、自由に出かけることもできない。

詩月にとって、入院中は窓枠から見える小さな空と、僅かに見える街並みだけが外界に繋がる全てだ。


毎日決まった時間に、数回訪れる看護師。

繰り返される会話と数日置きに行われる、仰々しい検査に不安が募る。

殺風景な空間に押し込まれ、時間を持て余し、うんざりしている。


詩月は休み前に与えられた幾つもの課題も、大方片付いて、見飽きるほど完璧に記憶した楽譜を幾度も頭の中で、ピアノの音に置き換える。


いくら指を動かしても鳴らない音。

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