take it easy
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 日も暮れて他に誰もいなくなったオフィス。

 そして、ずっとモニターを睨みつけている古瀬さん。

 眼鏡にモニターの光が反射して、その表情は解らないけれど、きっと無表情なんだろうなぁ。

 なんて思っていたら、長い指で眼鏡を直す。

 直してから、額を押さえて俯いた。


「……成宮」

「はい」

「お前は、一体どうしたいんだ」

「………?」

「いつの間にお前は、俺の目の前に座っているんだ?」

「えっと、多分10分くらい前からです」

「時間は聞いていない。何故、そこに座っているんだ」

 何故って、

「だって、寂しいじゃないですか」

 言った瞬間、古瀬さんは溜め息をついた。

「……終わったか」

「終わりました」

「なら帰れよ」

「え。寂しいです」

「お前の言動は、解らないな」

「そうですか?」


 そうなのかな?


 そうなら、やっぱりハッキリ言った方がいいのかな。


「古瀬さん」

「何だよ」

「好きなんです」

「あんパンならないぞ」

「アンパンも好きですけれど、古瀬さんが好きなんです」

「俺は仕事中……」

「終わったらいいんですか?」

「そんな暇はない」

「暇は作るものです」

 時間なんて、あるようでなくて、ないようであったりする。

 暇は……暇なんてものは、待っていたって出来るはずがない。

「俺は、仕事が大事だ」

「知ってます」

「他人に関わる程、器用には出来てない」

「そうは思いません」

「何を根拠に言っているんだ?」

「だって私、古瀬さんを見てますから」

 ニッコリ微笑むと、眼鏡越しに、古瀬さんと目が合った。


「俺の何を知っている」

「全部は知りません」

 知らないけど、知っている事もあったりする。
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