極上ドクターの甘い求愛



――カランッ


本当にごちそうになっちゃった。

コース料理をいただいて、レストランを出ると、まだ肌寒い春の風が頬を嬲る。

右手首にはめた時計を見ると20時過ぎを指していた。

…うん、まだ間に合う。


「岩崎先生。」

『ん?何?』


車が停めてある駐車場に向かう先生を呼び止める。

振り返った岩崎先生は、とても満足そうな笑みを浮かべていた。


「今からでも遅くないと思うので、飲み会に行ってください。」

『え?』

「この時間じゃ一次会は無理かもしれませんけど…、二次会ならこのまま飛ばしていけば間に合います。」


きっと私との食事よりも科の飲み会の方が先約だったはずだ。

それに――…、岩崎先生は皆のもの。

1年前、この病院に入ってから仕事より何より先輩に教えられたのは、岩崎先生は皆のモノなのだから一人だけ抜け駆けしようなんて考えるな、ということだった。



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