極上ドクターの甘い求愛
――「あ、ここです。」
結局マンション下まで送ってもらった私。
私と岩崎先生を乗せたベンツは、ちょうどマンションの入り口の前で止まった。
『へー、ここが繭ちゃんの家か~。独り暮らし?』
「はい、そうですよ。」
『セキュリティー甘くない?』
運転席に座っている岩崎先生は、怪訝そうに私のマンションを見つめている。
確かにセキュリティーは岩崎先生の言った通り甘い。
「でも、交通の便がいいんです。大学の頃から住んでますし、家賃も安いし。戸締りをきちんとしておけば大丈夫です。」
『そう?うーん、心配だなぁ…。』
納得いかないと言いたげな渋い顔をする岩崎先生とお父さんの顔が重なった。
初めてお父さんがここに来てマンションを見た時も、こんな感じで不服そうだったっけ。
何年も前の懐かしい思い出を思い出して笑ってしまった。
「岩崎先生、お父さんみたい。…本当に大丈夫ですから。今日はありがとうございました。御馳走になってしまって…今度何かお礼しますね。」
『え?そんな、いいのに。』
「いえ、させてください。これじゃあ私の気が済みませんから。」
あんな高いコース料理、お礼もなしに頂いたなんて親に顔向けできない。