極上ドクターの甘い求愛



「おはようございます。」


薬剤部に入ると、冷たい目が一気に私に集まって、瞬時にその視線は散らばって行った。

岩崎先生との飲み会事件があって以来、こういった私の挨拶に対する返事など、めっきりなくなってしまった。

前田先輩だけは、私の挨拶に返してくれるのだけれど、今日は非番。今日は一人で、この四面楚歌な職場で頑張らなければいけないのだ。


『繭ちゃん、繭ちゃん!』

「……小島さん。おはようございます。」

『おはよう!』


完全アウェーな薬剤部で、私にフレンドリーに話しかけてくれるのなんて、最早前田先輩と同僚の小島さんだけだな…。

いつもはきはきと元気な小島さんの可愛らしい笑顔に、少しだけ荒んだ心が癒された。

岩崎先生。可愛いって言うのは、こういう人のことを言うんですよ。

そんなことを心の中で思いつつ、小島さんの話に耳を傾ける。


『ねぇ、循環器内科の702号室に入院してる原田さんの担当って、繭ちゃんだよね?』

「はい、そうですけど。」

『その患者さんのね、カンファが午前11時20分から会議室7でやるんだって!さっき事務の子から連絡もらったからさ!』

「…そうなんですか、ありがとうございます。」


じゃ、私はちゃんと伝えたからね~、と言って小島さんは笑顔で自分のデスクに戻って行った。

11時20分か…。

手の甲にそのことを書き込んだ私は、白衣に着替えるために着替え室に向かったのだった。



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