極上ドクターの甘い求愛
そこには8人くらいの女性たちに囲まれて職員用玄関から出てくる岩崎先生の姿があった。
『今日の飲み会行かないんですかぁ~?消化器外科限定の飲み会ですよ~っ?』
岩崎先生を飲み会に誘う彼女たちの甲高くて甘ったるい声は遠く離れている私にも馬鹿でかく聞こえるのに、口を動かす先生の声は届かない。
――そっか、今日…飲み会だったんだ。じゃあ、あの人たちは消化器外科のナースさん達だ。
私の方が彼女たちよりも年下の筈なのに、岩崎先生の身体をベタベタと触っている彼女たちの方が若々しく見えた。
恋の力ってすごいな。なんてどうでもいいことに感心する。
じゃあ、今日は私との予定はキャンセルじゃない?そう思った時、ぶつかった私と岩崎先生の目線。
「っ!」
やばっ、と思って咄嗟に曲がり角からのぞかせていた顔を引っ込ませた。こういう時だけ視力が良すぎる私の目を呪いたくなった。
――何やってんだろ、私。
ふと我に返って、こんなことして何がしたいのか分からなかった私は、とりあえず帰ろうと思った。
先生も飲み会に行くんだし。今日の食事はなかったことに。あとで断りのメールを送っておけばいいよね?
そう思って正面玄関へと脚を向けた時だった。
『繭ちゃん!』
「わわっ!?」
突然後ろからかかった私を呼ぶ声に、私は肩をビクリと跳ね上げさせた。