労苦
「ええ」


「じゃあ仕事終わったら、庁舎内のラウンジで話すよ」


 橋村の言葉にそう返し、それから小一時間で仕事を片付ける。


 そして午後八時前に揃って一課のフロアを出、ラウンジへと向かう。


 誰もいなくて、妙に閑散としたラウンジの出入り口の自販機でブラックの缶コーヒーを二缶買った。


 片方を橋村に渡す。


「ああ、済みません」


 橋村が受け取り、プルトップを捻り開けて飲み始めた。


「門島さんは警視庁在籍当時、俺と、今一課の強行犯七係長の嶺岸の上司だった。昔かたぎで、何かとうるさくてな。現場は百回見て回れっていつも言ってる爺さんだったよ」


「いい気持ちしました?」


「うーん、どうだろ?……まあ、厳しい分、合間に見せる愛嬌もあった。俺も嶺岸も、他の部
下もそんな顔の時はホッとしてたけどな」




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