労苦
 帳場に大村がいて、


「梶間さん、今度は田村刑事部長まで連れてきて」


 と言ったので、田村が、


「いや、俺の方が先に現場を見に来てたんだ」


 と言い、軽く笑みを見せる。


 ちょうど午後一時過ぎで、捜査本部は空だった。


 椅子に座り、時折出入りする捜査員と挨拶を交わす。


 確かに田村のことを知っているのは、この所轄では大村だけだ。


 他の人間は誰も知らない。


 帳場で話し込んでいると、時が過ぎ去っていく。


 そして午後四時前まで、話をし続けた。


 田村も車で来ていたようだ。


「刑事部長、帰りは大丈夫ですか?」



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