労苦
第96章
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 当山謙太が何者かに絞殺されて、新宿区内のホテルに遺棄されたことで、警察は神宗会の仲間割れを真っ先に疑った。


 だが、ここで池上や田無など、他の構成員を強制的に検挙すると、南新宿の街が炎上する。


 慎重に動くつもりでいた。


 殺人犯が口を封じられたとなると、ただ事じゃないからだ。


 暴力団捜査の難しさに直面していた。


 何せ、ヤツらは法に触れるようなことを散々して回るのだから……。


 何の存在価値もなく、人間社会のクズなのだが、警察はあの手の輩を存悪だと思っていた。


 仕方ない。


 あぶれ者なのだし……。


 そして当山殺害から時が経過し、その週の日曜になる。


 午前6時に起きて、キッチンでコーヒーを一杯淹れた。



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