姉弟ものがたり
「わたしも、お弁当作ってくれるような兄弟が欲しいな」
何気ないその発言に、昨日の夕飯の残りでもあるきんぴらごぼうを食べながら思わず目を見張る。
「いくら香ちゃんでも、ゆうくんはあげられないからね!!」
バシっとテーブルを叩いて立ち上がると、香がサンドイッチをかじった状態のままで固まった。
「落ち着いて遥、ほら落ちたよ」
「あっ、どうも」
差し出されたペットボトルは立ち上がった拍子に転がり落ちたらしく、ありがたく受け取るとどうにも勢いが削がれてしまったのでそのままストンと椅子に腰を下ろす。
「弟くんも、もう大学生でしょ?遥が弟くんの事大好きなのは十分わかってるけど、そろそろ弟離れしたほうがいいんじゃないの」
なんとも聞き捨てならない台詞に、再び立ち上がろうとするも凄まじい香の眼力に負けて大人しく話を聞く体制に戻る。
「遥だって、彼氏がいるでしょ?弟くんだっていつかは彼女ができて、結婚して、お父さんになるかもしれないんだよ。
兄弟だからっていつまでも一緒にはいられないの」