姉弟ものがたり


「飲んでみて」

「…でもわたし、ハーブは苦手だから」

「大丈夫」


結局、香の笑顔に促されるように恐る恐る水筒に口を付ける。
チビッと少しだけ口に含んでみると、スッと通り過ぎたハーブの香りを追いかけるようにあとからフルーツの甘酸っぱさが広がる。


「…飲める」

「でしょ?」


驚いて目を見張ると、それを見た香が可笑しそうに笑った。


「ハーブティーが苦手な人でも飲めるようにって考えたんだって。
匂いはすごく強いけど、でも嫌な感じじゃないでしょ?胸の中にスーっと広がって、心が晴れる感じ。
そのあとに来る甘さがまたダルくなくてちょうどいいでしょ?」


嬉しそうに語る香の話に聞き入りながら、もう一口すする。


「心が、平和になるって…あの人はよくそう言うの」
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