新選組へ ~ 連理之枝 ~
部屋を案内した後、休むことなく庭へ

あの木がどうのとか

あの花が綺麗だとか

この葉っぱが良い色だとか



小さな、どうでも良い発見をして

ちっとも歩かない


このままでは、仕事が出来ない…



油断して、お芳と遭遇した


「なっ夏弥!!」


しまった… 会わせないはずが…

「お芳…あっおい!!」

止めるのも聞かず、夏弥の両肩を掴み

「生きてたのね!!」




「ふふっ
似てますか?夏弥さんに」

「え?」

「お芳!!東宮様だ!!」

「えええええ!!!!!」

「夏弥さんでなくて、すみませんね
お芳様、ひとつきお世話になります
慶喜様のご側室でしたよね?」

「はい…あの失礼致しました」

お芳は、顔を真っ赤にして

そそくさと逃げて行った


「なるほど…夏弥さんに似ているので
皆様、ジロジロ見るのですね!」

「申し訳ありません」

「慶喜様、俺に気を使わないで下さい
何でも言って貰って構いませんよ」


時々、諦めたような表情をするとこ

夏弥のままだな…


「あの離れは?」

「夏弥の部屋です」

「行っては、駄目ですか?」


「申し訳ありません
夏弥との思い出が残っていますので…」

「慶喜様!!
では、あっちに行きましょう!!
これは、何色の花が咲きますか?」



いわゆる


質問攻め?


辺りが薄暗くなるまで続いた


「楽しかったです!ありがとうございます!」

にっこりと本当に楽しかった様子で

安心した


「明日は、朝餉までなら散歩出来ますが」

「行きましょう!!」



手を振り、喜ぶ姿が

まるで、子供だなと笑ってしまった



「明日が楽しみです!!」




ニコニコしながら食事をする

こんな姿を見たことのないお芳は

驚き目を開き、ジロジロ見る



「あっ!!ごめんなさい!!
お芳様の慶喜様なのに…
あっ!!お芳様も散歩しましょう?」


「え!!あっ…ええ!!
良いのですか?」

チラッと俺を見る

「東宮様が良いなら、良いだろう」

「行きます!!」


単なる散歩を、一大事のように喜ぶ

夏弥とお芳がおかしくて、また笑った


< 234 / 323 >

この作品をシェア

pagetop