新選組へ ~ 連理之枝 ~
いつの間にか気を失っていたらしい


懐かしい、土方さんの臭い


「ようっ起きたか?」


踏み机に向かい仕事をする
これまた懐かしい姿


「すみません」


「くくっ 謝ってばっかだな?」


からかうように笑う顔が、なんとも美丈夫で
憎たらしいくらいだ


「帰らなきゃ…」


そう、帰らなきゃ…

慶喜の傷が体に現れる



外が少し騒がしいなと思ったら



今度は、伊東さんが斬られたらしい


先ほどの平助の言葉が、浮かぶ


「治します!!!」




人払いして、伊東さんと二人きり

伊東さんの傷を見てすぐわかる

この怪我は・・・

刀が握れなくなる


「伊東さん… 治します
だから…今からすることは、誰にも言わないと
約束して?」

「約束する!だから、助けて下さい!」


怖いよ


伊東さんが、誰かに言わない補償はないから


だけど、見捨てることなんてできない


俺は、着物を脱いでサラシをとった

「怪我を治すには、きついでしょうけど
まず、抱いて下さい」


「誠くん、君・・・」

驚くよな…女だし、慶喜とのこともばれるな

自然と涙が流れ落ちた

「いけないよ」

「平気!伊東さんの傷、治すから!」






「優しくしますね」









言葉通り、伊東さんは、優しかった

慶喜より、睦仁より

女のツボを知っているのか、気持ち良いと

思った


約束通り、傷を治した

1日に2人治した事がなかったから

知らなかった

慶喜の傷が、現れてしまった


伊東さんは、すべてを察した


そして、俺の手当てをしてくれて

涙を流してくれた


「辛かったね… こんな想いをずっとしていたのかい?君は、私の恩人だよ…ありがとう」


眠気に襲われつつ、着物を着る俺を

手伝ってくれて、俺は伊東さんの腕の中で

眠った






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