雨恋~雨のちキミ~
「何?『付き合って』って言われて、押し倒されたんか?」


『笑うと可愛いな』


ブシューッと音を立てて顔面から湯気が出たように、熱くなる


「…頬っぺたに………触られた」


「は?それだけ?」


昨日先輩が触れた部分に手を添わすと、眉間に皺を寄せた柚羽が呆れた声を上げた


「それだけって…」


「ってか、誰と付き合うことになったん?里中くん?」


「何で里やんが出てくんのよ!」


今朝、昨日の宣言通り里やんが迎えに来た

ニマニマするお兄ちゃんを無視して一緒に登校していると

昨日の先輩とのことは夢だったんじゃないかって、不安になった


「じゃあ、誰なん」


「水月先輩…」


「はぁっ?!水月先ぱ───っ、んぐっ…」


慌てて柚羽の口を両手で塞ぐ

勢いがつき過ぎて、首が後ろに反り返ったから悪いことしたなとは思ったけれど


「そんなおっきな声で叫んだら、皆何かと思うやん!」


体を縮こまらせ、柚羽に耳打ちした

周りに視線を巡らせると、何人かがこっちを見ていたけれど

首を傾げながら何事もなかったかのように、それぞれの世界へと戻っていった


「………いったぁ…。ちょっとぐらい手加減しーや…。そりゃ、相手があの先輩やったら、誰でも驚くやろ」


やんな…
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