2・5次元の彼女
「何度も言うが、ユウが、自分で選んだんだ」

HARUが重たい腰を上げた。
一歩、また一歩と。
緩慢な動きで、景斗との間合いを詰める。

「お前の出る幕じゃない」

いつでも掴みかかれる距離。
景斗より10センチ程度身長の高いHARUが、身体でプレッシャーを与えてくる。
緊迫した空気に、肌がぴりぴりと悲鳴を上げる。

それでも。
引けない。
今さら、これ以上失うものなんてないのだから。

「あんたはユウさんの隣にいるべき人じゃない」

迷いなく。はっきりと告げた。
HARUの片眉が、ぴくりと動く。

「……」

景斗の並々ならぬ覚悟を感じ取ったのか、やがてHARUはため息をついて景斗から視線を外した。

ソファの背もたれに腰掛ける形で屈むと「お前、変わったな」そんなことを呟いてひと息ついた。
その声は冷静に戻っていた。
脅しが無駄だと悟ったのかもしれない。

「ユウが、お前にどんな説明をしたか知らないが……
お前が怒っているのは、あれだろ?
彼女を強引に従わせてるからってことなら、それは違うぞ?
あんなものあろうがなかろうが、彼女は俺についてくるよ。断言してもいい。
ふたりの間で納得していることだし、別に弱味を握ってるからどうこうしたって話じゃなく――」
「ちょっと待って、」

景斗は途中からHARUの話の意図が分からなくなって、すかさず割って入った。
「弱味って、何のこと?」

予想外の景斗のリアクションにHARUの表情が固まった。
「……事情、全部聞いたんじゃなかったのかよ」
みるみるうちに『しまった』という後悔の顔色に変わっていく。
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