2・5次元の彼女
「もし、ユウさんが構わないなら、僕は……」

景斗はそう言うと、私の首筋に手を沿えた。
顔の距離が徐々に縮まって、私は目の前にまで迫った景斗の長い睫毛に見とれてしまう。

唇が触れ合う直前、私は意地悪に問いかけた。
「……抱きしめるときは緊張するのに、キスは平気なの?」

彼が私の口元で囁く。
「緊張しているよ、また手が震えてる」

私の首筋に触れる手に力がこもり、より一層私と景斗の距離が近くなる。

「でも、唇だけは奪って来いって、イリーナの命令だから」
「結局全部イリーナの言うとおりなの? それじゃあイリーナに勝てないよ?」
「そんなことないよ。身長は僕の方が高い」
「勝ってるのって、身長だけなんだ」


くすりと笑った私に、景斗は口づけた。

滑らかな舌の感触が伝わってくる。
激しい唇は、とても緊張しているとは思えない。

穏やかな性格の景斗は、普段出せない感情を、言えない言葉を、唇に込めるのだろうか。

相変わらず、情熱的。

あのときもそうだった。
初めて会ったあの日、予期しなかった突然のキス。

きっと景斗は覚えてなんていないのだろうけれど。
私はちゃんと、あのときの唇の感触、覚えている。
不意打ちだったから、ただただ驚いて、感覚を確かめる余裕なんてなかったのだけれど。

今なら感じられる。
身を委ねることができる。
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