2・5次元の彼女
ログインした私は、まずフレンドリストを確認した。
リストにはゲーム内で知り合った友人たちの現在のログイン状況とメッセージが添えられている。
お目当てのHARUはまだログインしていない様子。残念。
代わりに仲の良いフレンドの景斗がログインしていた。

私はいつもの待ち合わせ場所へ向かってキャラクターを走らせる。
ゲームの中の街にある、薬屋の横。
それが私たちのたまり場。

お決まりの場所に辿り着いた私は、見慣れた魔法使いの格好をした男の子を見つける。
やはりここにいた。景斗だ。
私がすかさずキーボードを打つと、画面下のチャットに
――ユウ『景斗お疲れ様。今日は来るの早いじゃん』――
と表示される。

『ユウ』は私のキャラクターネーム。
ごつい鎧を身にまとった、筋骨隆々の大男。

私は男を演じていた。


やがてチャット画面が更新され、景斗からの回答が表示される。
『お疲れ様です。残業しなくて済んだから、早く家に帰ってこれました』

私も返事をした。
『俺も同じく』

私は完璧に男を演じきっていた。
自分のことは『俺』と呼ぶし、語尾だって、ちゃんとキャラクターに合う様に男らしく変えている。
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