2・5次元の彼女
ふと画面の隅から人影が現れ、私たちではない誰かのメッセージでチャットが更新された。

『乙カレー』

乙なカレーではない。『お疲れ』のタイピングミスだ。
こんなボケたことをしてくるのは、彼女しかいない。

私と景斗は挨拶に答えた。
『お疲れ、イリーナ』

イリーナと呼ばれた女性は、淡い紫色のひらひらとした服をなびかせながら、私たちの元へやってきた。
彼女の身なりは上品で可愛らしく、そのくせ行動は大胆かつ大雑把。
そのギャップがなんともミステリアスなムードを醸し出している。

彼女は私たちの傍までくると、キャラクターをぺこりとお辞儀させた。
『お2人は暇? 狩り、手伝ってもらえない?
欲しい錬金用の素材があるのー』

もちろん、仲間に助けを求められて、断る理由はない。
『了解』
『いいですよ』
イリーナに促されて、私たちは立ち上がった。
走り始めた彼女の後について、私たちもキャラクターを走らせる。


彼女に連れられてやってきたのは、街から少し離れた森。
この場所のモンスターは、楽勝で倒せる。

――はずだった。

今日こんなにも苦戦を強いられた理由は、他でもない。
HARUがいないからだ。

私が鋼の肉体で敵の攻撃を受け止める。
防御力の弱い景斗とイリーナが、後方に隠れて支援魔法を打つ。
だが、敵に必勝打となる攻撃を与えられる人物がいなかった。

『やっぱり主砲が不在で狩りは厳しいかぁ』
イリーナが攻撃の合間に呟いた。

HARUは私たち3人よりも古くからゲームを始めていて、レベルも断トツで高かった。
騎士である彼は攻撃力に突出していて、この程度の敵は1撃でなぎ倒すことができる。
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