2・5次元の彼女

私たちはのんびりと園内を散歩しながら、好き勝手に写真を撮っていった。
気が付くとすっかり影が落ちていて、公園から少し歩いたところにあるカフェで休憩を取ることにした。

温かな紅茶のカップを口元へ運びながら、私は呟く。
「HARUは、休みの日はこうして過ごしてるんだ」

HARUは頷きながら、コーヒーを一口含んだ。
「たまにだけどな。良い写真が撮れそうな場所を探して遠出してみたりとか」

「HARUのアルバムにいろんな場所の写真があったもんね」
「昔は旅行も好きだったからな。最近は忙しくてなかなかいけないけど」

「そっかー」
私は頬杖をついて、ため息を漏らした。
仕事の休みが不規則でまとまった連休も取れず、ここ数年旅行に行けていない。
「いいなー、旅行」

私がぽつりと呟くと、HARUは「じゃあ、」と言って、唇の端をニッと上げた。
「今度は一緒に旅行へ行く?」

「えっ?」

彼の言葉に思わず固まってしまった。

旅行?
HARUと?
本当に?
……それって――

戸惑う私を見て、HARUは少し寂しそうに苦笑する。
「なんだよ、俺と旅行はやだって?」

「そ、そんなんじゃないよ」私は慌てて首を大きく横に振った。
「行きたい! HARUと旅行!」

一緒に旅行だなんて。
まるで、付き合っているみたいじゃないか。

嬉しい。もっとずっと一緒にいたい。
HARUはとっても優しくて、私の喜ぶことをたくさんしてくれて
なんだか私は夢を見ているようだった。
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